
SNSやテレビ番組の影響を受け、注目される「乳液だけ」のスキンケア。化粧水や美容液を使用することなく理想の美肌が手に入るとしたら、非常に嬉しく思いますよね。
その一方、王道から外れたお手入れに対し、「本当に乳液だけで良いのか?」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、乳液だけのスキンケアに伴うリスクと正しい乳液活用術を紹介します。
乳液の役割とは?
そもそも乳液は、化粧水や美容液で補う水分や保湿成分を内部に閉じ込め、状態を整えるための基礎化粧品です。主には、洗顔によって失われた皮脂に代わり、油分の膜を張ることを目的として使用します。
乳液とよく似た役割を果たす基礎化粧品は、クリームです。乳液とクリームの大きな違いは、油分の配合量と質感。
一般的に乳液は、クリームほど油分の配合比率が高くなく、サラサラとした質感の商品が主流です。比率で言うと、乳液に含まれる油分の量は数%〜30%程度・クリームに含まれる油分の量は40%以上。
油分の配合率の低い乳液ほどベタつきにくく、どっしりとしたクリームによるお手入れに苦手意識を持つ人でも使用できます。
乳液だけのスキンケアで美肌になる?
「乳液だけのスキンケアで美肌になる」といった理論は、正解とも間違いとも言い切れません。乳液だけのスキンケアを推奨する人たちの論点は、大きく分けて2点。
この論点に当てはまる化粧水を使用していた、もしくは使い方を行っていた人だと、乳液だけのスキンケアで美肌になることはあります。
(1)化粧水に美肌を損なう成分が含まれる
多くの化粧水は、アルコールや尿素といった刺激成分を含みます。化粧水を省略することで刺激成分に触れる頻度が減少するため、肌荒れリスクの軽減が可能です。
(2)化粧水を付けるときの摩擦が肌にとっての負担である
コットンで強くこする・手のひらで叩き込むといった付け方は、肌荒れを招いてしまうことがあります。化粧水を止めることでこの行為から解放されるため、肌の負担の軽減が可能です。
乳液の正しい使い方
そもそも論にはなりますが、「乳液の正しい使い方を知っている」と自信を持って言えますか?ここでは、手でつける場合・コットンでつける場合に分け、乳液の正しい使い方をおさらいします。
手でつける場合の使い方
手のひらで挟み込むように乳液を温め、柔らかくした状態で使用します。皮脂分泌の少ない目元や口元、頬のあたりへ最初に付けて、額や顎へと進みましょう。
どの部位につける時も、内側から外側へ伸ばす流れが基本です。顔の中心近くから外側方向に向かい、手のひらで包み込むようになじませます。
コットンでつける場合の使い方
手でつける場合より多めの量をコットンに出し、皮脂分泌の少ない部位から多い部位の順番でなじませます。コットンを強く押し当てず、滑らせるように付けることも大切です。
手とコットンのいずれでお手入れを行う場合も、肌全体がしっとり潤い、ベタつきを感じない程度が適度な量です。乳液の量が多すぎても少なすぎても肌の調子が整わないため、自分にとっての適量を使いましょう。
乳液を付けるタイミング
乳液を付けるタイミングは、朝と夜の洗顔を行い、化粧水を付けた後です。美容液を使用する場合は、化粧水・美容液・乳液の順番を守って下さい。シートマスクやマッサージジェルなどスペシャルケアアイテムを使用するタイミングは、乳液を付ける前が適切です。
原則的なルールとしては、水分や栄養補給を行うアイテムの後に乳液を使い、油分を補う順番と考えて下さい。
乳液を付けるタイミングのもう1つのルールとして、直前の基礎化粧品を付けてすぐに使用せず、1分程度のタイムラグを設けることも大切です。化粧水や美容液をハンドプレスで押し込み、肌に浸透したことを確認してから、乳液を使用しましょう。
反対に、必要以上に長いタイムラグを設けてしまうと、肌の乾燥を悪化させます。短すぎず・長すぎずの適度なタイミングを見極めて、一連のお手入れを行いましょう。
乳液を使うときの注意点
乳液の正しい使い方やタイミングで紹介した内容は、一般的な話です。基礎化粧品の切り替えを行う際には、メーカー指定の使い方やタイミングを確認し、正しい方法でお手入れしましょう。
たとえば一部のメーカーで扱いの見られる「先行乳液」は、化粧水の前に使用する商品。一般的な使い方に従って、化粧水の後に使用しても、十分に機能しません。その他に、朝専用の乳液・夜専用の美白乳液など、個性的な商品はたくさんあります。
これらの商品を本来の使い方以外の方法で活用しても、目的を果たしません。お手入れにかける時間と費用を無駄にしないためにも、正しい使い方を守りましょう。
美肌を作るためのスキンケア方法7個
最後に、乳液を活用したスキンケアのバリエーションを紹介します。乳液だけのスキンケア・王道的な使い方以外にも様々な用途に乳液を活用し、美肌作りを行うことができますよ。
合わせて、自分に合うスキンケアの見極め方やスキンケア商品の選び方も紹介しますので、美肌を作るための総合的なマニュアルとして、有効に活用下さい。
1. メイクの濃さに応じたクレンジングを活用する
メイク汚れをきちんと落とし、洗顔の下準備を行うことは、美肌作りの基本です。ただし、メイクを落とす力の強いクレンジングを使用するほど肌にとっての負担は大きくなるもの。ナチュラルメイクを行った日には、市販のクレンジングの代用として乳液を活用すると、肌の負担を軽減できます。
◎乳液クレンジングのやり方
【1】たっぷりの乳液を手のひらに出す。
【2】指の腹でマッサージを行うようにメイクとなじませ、汚れを浮かせる。
【3】アイラインやリップメイクは、乳液を含ませたコットンでパックを行い、拭き取ることできれいに落とす。
【4】ぬるま湯ですすぎ、いつも通りの洗顔を行う。
濃いメイクを乳液で落とすことは難しいため、市販のクレンジングとの使い分けを行うことが美肌作りに貢献します。
さらに言うと、メイクを落とす力の強いオイルクレンジングを使用する日・クレンジングクリームを使用する日といった市販のクレンジングのバリエーションも含めた使い分けルールを決めることが大切。要らない汚れは全て落とし、肌の負担はできる限り軽減して、毎日のメイク落としを行いましょう。
2. 定期的なピーリングで角質ケアする
ピーリングとは、古い角質・毛穴汚れを取り除き、化粧水や美容液の浸透を促すためのスキンケアです。肌のごわつき・くすみの気になる時にピーリングを行うと、肌表面の厚い層が耕され、基礎化粧品のしみ込みやすい状態を作ってくれます。
ピーリングを行う際には、市販のジェルや洗顔料を使用することが一般的です。これらのアイテムに苦手意識を持つ人は、乳液洗顔を試してみてはいかがでしょうか。
乳液洗顔とは、乳液・蒸しタオルを使用したピーリングケアのことです。乳液の油分・蒸しタオルの蒸気の力で肌表面を柔らかくほぐし、ピーリングに近い働きが期待されます。
◎乳液洗顔のやり方
【1】たっぷりの乳液を手のひらに出し、顔全体をパックする。
【2】洗面器にお湯を張り、蒸気を顔に当てながら、顔全体をマッサージする。
【3】2〜3分のマッサージを続けた後、蒸しタオルを顔に乗せる。
【4】残った乳液、古い角質を蒸しタオルで優しく拭き取る。
3. 過剰な洗顔を行わない
過剰なスキンケアを行うことは、美肌作りを妨げます。洗顔の回数は朝と夜の2回に留め、必要以上のスキンケアを控えましょう。その他、以下のような洗顔も、必要以上のスキンケアに該当します。
・汚れをきれいに落とすため、ゴシゴシこする
・長時間かけて、隅々まで洗顔する
・ベタつきを解消するため、熱いお湯ですすぎを行う
・スクラブ洗顔を頻繁に行う
美肌とは、水分・油分のバランスが整い、正常なバリア機能を保持する肌です。過剰な洗顔により必要以上の油分を取り去ったり、潤い不足を招いたりすることは、美肌の大敵。正しい頻度・方法を守り、適切な洗顔を行うことがきれいな肌を作ります。
4. スキンケア方法を定期的に見直す
乳液だけのスキンケアにしろ、王道のスキンケアにしろ、全ての人にマッチする完璧な手法は存在しません。年齢や季節によって相性が変わるケースもあるため、定期的なスキンケアの見直しを行いましょう。
新しいスキンケア方法に挑戦し、肌の調子が不安定になる場合は、ミスマッチを疑うことも大切です。合わないお手入れを継続することにより、乾燥や肌荒れが悪化するリスクもあります。SNSや動画サイトで紹介される美肌術を鵜呑みにせず、自分にとって望ましいスキンケアを探す努力が必要です。
5. 保湿重視のスキンケアを行う
適切な保湿ケアは、脂性肌や普通肌の人にとっても必要なお手入れです。クレンジング・洗顔後の保湿を欠かさず、日々の習慣として継続しましょう。
ここで言う「適切な保湿ケア」とは、水分・油分のバランスを整えて、バリア機能を保持することです。バリア機能とは、外部刺激から肌を守り、潤いを維持するための機能を指します。
私たちがもともと持つバリア機能の構成要素は、細胞間脂質・天然保湿因子・皮脂膜の3個です。細胞間脂質や天然保湿因子の不足を補うためには化粧水や美容液、皮脂の不足を補うためには乳液やクリームと複数種類の基礎化粧品を正しい順序で使うことで、状態が整います。
そのため「脂性肌だから、乳液・クリームは使わない」といった安易な判断は、肌トラブルを招くもと。乳液だけのスキンケアしかりですが、明確な理由を持たない省略は避け、健やかな肌を維持しましょう。
6. 季節の変わり目に集中保湿を行う
気候や生活の変化から肌トラブルの増加する季節の変わり目。バリア機能の低下による乾燥や大人ニキビ、皮脂の増加を生じやすい時期にもあたることから、普段以上に丁寧な対策を行いましょう。
この時に行う対策も状態に応じて見極める必要があるのですが、ひどい乾燥やバリア機能の低下をリセットするための方策としては、シートマスクを活用した集中保湿を検討できます。
保湿成分を贅沢に配合したマスクを使い、肌の調子を整える方法です。市販のシートマスクではなく、乳液を使用し、集中保湿を行うこともできますよ。乳液を使用する集中保湿「乳液湿布(乳液パック)」は、次の手順で行います。
◎乳液湿布(乳液パック)のやり方
【1】普段通りのスキンケア(クレンジング・洗顔・化粧水、乳液による保湿)を行う。
【2】大判のコットンに適量の乳液を出し、全体に広げる。
【3】乾燥の気になる部分に【2】を貼り付け、5分間パックする。
【4】コットンを剥がし、顔に残った乳液を手でなじませる。
乳液湿布(乳液パック)を行うことで細胞間脂質の配列が整うため、バリア機能が強化され、敏感に傾いた肌をリセットできます。ひどく乾燥を感じた時のお助けケアとして実践し、肌の状態を整えて下さい。
7. 紫外線対策を怠らない
シミ・そばかすの目立たない理想の美肌を維持するためには、紫外線対策が欠かせません。屋外レジャーを行う日はもちろんのこと、室内で過ごす日にも油断大敵。窓から差し込む紫外線の影響を受けるリスクがあるため、対策を怠ることはできません。
しかし、家事や仕事、育児に追われ、忙しい毎日を送る人が毎日欠かさず紫外線対策を行うことは大変ですよね。UVカット乳液を活用すれば、お手入れ時間を短縮しつつ、ダメージ予防が可能です。
乳液の特徴を踏襲し、サラサラした質感に作られた商品も多いため、べたつきが苦手な人でもストレスフリー。UVカット乳液にもいろいろな質感、強さの商品が存在するため、用途に応じて選択しましょう。日焼け止めの強さを選ぶ時の目安は、次の表の通りです。
SPF10〜20 | PA+〜++ | 仕事や買い物など、日常使いに適した強さ。UVカット乳液やUVカット下地で対応することもできます。 |
SPF40~50 | PA++〜+++ | ウォーキングやランニングなど、軽度の屋外活動やスポーツに適した強さ。必要に応じて、帽子や日傘を併用しましょう。 |
SPF50~50+ | PA++〜++++ | 海や山など、紫外線の強い場所に適した強さ。汗をかく活動を行う日には、ウォータープルーフタイプをおすすめします。 |
強い日焼け止めを使用するほど肌に負担がかかるため、ライフスタイルに応じた使い分けをおすすめします。顔だけでなく、手足や背中の紫外線対策もきちんと行い、肌トラブルを予防しましょう。
まとめ
この記事では、乳液だけのスキンケアを切り口として、美肌作りの基礎知識を紹介しました。乳液に限らず、全ての基礎化粧品の使用目的や正しい活用方法を今一度見直すことが美肌作りの近道です。
乾燥や大人ニキビ、たるみといったあらゆるトラブルは、緊急事態を示すサイン。肌から発信されるSOSサインを見逃さず、今の自分にとって必要なお手入れをその時々で検討しましょう。